なるっぱらいの伝説

[伊=仏]129min
 
○Cast アンドレアス●ルトガー・ハウアー Rutger Hauer 老紳士   ●アンソニー・クエイル ギャビー  ●サンドリーヌ・デュマ ヴォイテク ●ドミニク・ビノン ○Staff 監督    ●エルマンノ・オルミ 原作    ●ヨーゼフ・ロード 「聖なる酔っぱらいの伝説」(白水社刊) 脚本    ●トゥリオ・ケツィク・エルマノ・オルミ 撮影    ●ダンテ・スピノッティ

 1988年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞・OCIC(国際カトリック映画事務局)賞受賞
1989年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞最優秀賞(作品・監督・撮影・編集)受賞
 

人生の回廊から去っていった酔っぱらい
  
 これは単なる酔っぱらいの体験談に留まらない深みを持っている作品です。それはルトガー・ハウアーの高い演技力だけでなく、パリの街や人達が持っている雰囲気を巧く映像に撮り込んでいるからなのかもしれません。更にエルマンノ・オルミ監督はアンドレアスの思考や妄想を細かく映像として織り込み、映像制作者としての力量を感じさせる充実した内容となっています。
 僕はひとしきり酔っぱらいの悪行は経験済みなので、酒に溺れる心理状況は理解出来ます。アンドレアスが橋の袂で新聞紙を体に巻いて寝ている姿が「明日の僕の姿なのではなかろうか?」と不安にさせられる程の親近感が湧きます。


ビデオを手に取って驚いたのがギャビーの美しさです。作中でも魅力の笑顔でアンドレアスと観ている者を魅了します。ホームレスのアンドレアスがギャビーみたいな美人とラブロマンスを演じる事が出来る偶然がこの作品の持つ不可思議な雰囲気を盛り立てるもう一つの要素となっています。また、アンドレアスの華やかなりし時でもあり、はかない一瞬でもあるのです。

 
 この作品から受けるインパクトは他にもあります。アンドレアスの無欲さです。彼の金や物に対する無欲さは現代社会に生きる僕には理解しがたいものです。そして、無欲な彼とシンプルな出会いと付き合いを演じる旧友や昔の恋人との、淡白なやりとりです。僕が持つ、気負いなく生きる酔っぱらいに対する親近感は理想像へと変容していくのです。

恋愛もあっけなく終わり、お金も無くし最後の大酒飲みまくりのシーンにかなり時間を割いています。酔っぱらいながらこれまでの人生を振り返り、やがて人生の回廊からの出で立ちへと向かってゆきます。
 作品を見終えてもアンドレアスに不幸を感ずることはありません。それは頑なになって生きている僕たちに、アンドレアスは人間としての生き方にバリエーションがあることを教えてくれているからです。
 
 

ビデオの帯に書いてある紹介文章
ルトガー・ハウアーが限りなく飲む!
一杯の酒から広がる気持ちのいい大人のファンタジー
 とってもいい気持ち−ホロ酔い気分になってしまう。まるで、アンドレアスと一緒にワイングラスを傾けていたかのようだ。パリに暮らすルンペン、アンドレアスはある日、不思議な紳士から200フラン渡される。そんな大金は返せないと辞退すると、紳士は「返せる時がきたら聖テレーズ像のある教会に返してくれ」と言い残し去っていく。さて、この時からアンドレアスには、次々と幸運が舞い込んでくる。買った財布の中に金が入っていたり、旧友との再会そして若い踊り子とのアバンチュール等々。しかし、彼はちっとも欲がなく、心優しく、誇り高い。こんなふうに生きていきたい。これは、大人のための夢物語なのだ。イタリアの才人「木靴の木」のエルマンノ・オルミ監督の細やかな演出により、ルトガー・ハウアーが見事にアンドレアスを演じる。見た後は、絶対一杯やってしまう、そんな作品だ。



 この聖なる酔っぱらいの伝説以外ではブレードランナー役が有名ですね。 アンドロイドのやるせない立場を、左の写真のような切ない表情で好演していました。他にも数多くの出演作品があるようです。詳しいことは知りませんが、突出した技量を持つ俳優さんなんでしょうね。